八代アマカミ・アマテルカミが父の七代アマカミ・イサナキから譲られた国家統治の神宝は「タマ」（八尺瓊勾玉）、「サカホコ」（草薙の剣）の二種でした。トコヨノクニ（常世の国、日本の最初の国号）の建国の理念であった「恵民立国」を表徴したもの「タマ」と、アマカミの指導に逆らい、他の人々に害を与える罪人には処断を加える意味を持つ「サカホコ」でした。アマテルカミは、この二種のカンタカラにカガミを追加して「ミクサタカラ」（三種神器）として進展させてゆきました。

当時の治世の基本理念は、タマに象徴される「トノヲシテ」（恵民思想）を第一の目的とされていました。初代アマカミ・クニトコタチの建国の精神です。しかし、六代アマカミ・オモタル、カシコネの時代に到来した気候の変化による世相の悪化に対して立ちいかなくなり、罪人を処罰する意味を持つホコ（後のツルギ）をカンタカラに加えることになりました。

しかし、八代アマカミ・アマテルカミの御代には、ハタレの騒乱のより命を縮めた人が沢山発生してしまいました。そしてアマテルカミは、国民の本当の幸せは、こういった騒乱の発生を未然に防ぐことにあるとみて取りました。父イサナキによって水耕稲作によって国は豊かになりましたが、いくら物質的に豊かになっても、これで万全というものではなく、人々に真の幸せをもたらしたい、と第三番目のカンタカラとして「カガミ」を追加しました。アマテルカミは人の心の中心を「カガミ」と表現したのです。アマテルカミは、このカガミを「ヤタノカガミ」と名付けました。「ヤタ」とは全国民という意味が込められていて、人々の心に自立心が育つようにとのアマテルカミの強い願いが込められていました。

『天地の　平けし時に　二尊の　経矛に治む　民 増して 　アマテル神の　御鏡を　足して三種の　御宝を　授く御孫の』
『前に引き据え　垂上ぐる　君 ヤサカニの環珠　セオリはマフツ　ヤタ鏡　アキツ 腐薙　八重剣』
『ヤタの鏡は　経に触れ　諸人の直曲を　鑑みよ　また八重垣は　右に預け　争み あらば　よく平けて　恵み和せて』
『天地も　内外も清く　和る時に　大内に侍る　臣･民も　ヤタの鏡を　拝む時』
『これで人実を　抱かんと　丸めて径　二尺足る　鏡は宮の　実柱に　上を招くの　八尺鏡』
『早きハタレに　赴かで　ヤタのカガミの　謂 聞けば　汚曲を避るぞ　我が心　入れて癒すく　陽陰が守るぞ』
『曇り錆び　奪わる中子　磨かんと　ヤタの鏡に　向かわせて　磨く器は　元の守』
『中子の形　鏡ぞよ　人 見ぬとても　盗むなよ　およその人は　知らねども　穢 現るる　元の守』
『この三つを　合わす明暗見の　”ヤ” はヤシロ　”タ” は民を治す　その君の　万の御機の　政事』
『治む八隅の　民は八尺　八尺身あまねく　照らさんと　ヤタのカガミと　名付くなり』
『御手づから　文を御孫に　授けます　セオリツ姫は　御鏡を　持ちてカスガに　授けます』
『二柱　政る経矛の　道あれど　アマテル神の　ヤタ鏡　創り 三種の　尊宝』

アマテルカミが言いたかったのは、カガミを毎日見て、そこに映し出される自分の姿を見て正しい心の自分と、醜い心の自分が分かるのです。醜い心の自分に気づいた時は、自らがその原因を探し出し、反省することが肝要、ということでしょうか。

皆さん、「カガミ」という字をよく見てください。カ・ガ・ミから「ガ」（我）ととると「カミ」（神）になりますね。

今では誰もこのヤタノカガミを見ることはできませんが、これは当初、セオリツヒメは民のためにと二見岩(フタミノイワ・夫婦岩）に置いたものです。

『前に引き据え　垂上ぐる　君 ヤサカニの環珠　セオリはマフツ　ヤタ鏡』。

マフツとはそのままとか、写しとか、真実、直ぐなさまをいいます。

『人成る法の　御鏡を　セオリツ姫の　持ち出でて　後のハタレの　人と成る　マフツの鏡　見るために　フタ見の岩と』

このマフツのヤタ鏡が三種「八咫鏡」の原型となったようですね。

悲しいことに今、二見の夫婦岩に訪れる人はほとんどこのことを知りません（おそらく天皇・皇族含めて）。でも皆さんは、もし夫婦岩にいくことがあったら、このアマテルカミとセオリツヒメのことを思い出し、民の本当の幸せを思う心、その尊い思いを感じ取ってくださいね。

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